NHK「ファミリーヒストリー」について思うこと

NHKの番組「ファミリーヒストリー」。いつも楽しみに見ている方も多いことと思います。
俳優・歌手・芸人など著名人の家族の歴史が徹底取材で詳しく紹介され、毎回のように意外な展開や思わぬ感動があります。
私たちは著名人本人には関心があっても、普段はその祖先にまで興味を持つことはありません。それでも番組を見るとつい引き込まれてしまう。なぜなんでしょう。
いろんな世代の祖先がそれぞれの時代に翻弄されながら、居住地や職業などの生活基盤を転々と変えたりして苦労しつつも逞しく生き抜いてきた姿に接すると、本当に頭が下がります。
そして、そうして生きていく中でほとんど偶然のように小さな出会いやご縁があり、それが後の子孫につながっていく。著名人の方もそうした祖先から何らかの影響を受けて育ち、今につながっている。
私たちもそれと同様に、無限につながる祖先の方々の人生が連続した結果この世に生まれ、その影響を受けてきたと言えます。また、私たち自身もいつかは祖先と呼ばれるようになり、子孫が未来に向かって続いていくであろうと想起されます。つまりこの番組のストーリーは、過去と未来の間で現在を生きる私たちへの”エール”とも言えるのではないでしょうか。
もうひとつ興味深いのは、出演している著名人の方が、一番近い自分の親のことでさえ「今まで知らなかった」という意外な過去が明らかになる部分です。
親は何も語らずに亡くなってしまい、番組の取材をとおして親せきや周囲の方からそれが明らかにされる。
親にしてみれば、あえて子どもに言わないと決めた部分でしょう。でも子ども(著名人)からすれば、「墓場まで持っていく」というほどの絶対に口外できないことはさておき、親の人物像を深く理解し、自分に与えてくれた影響の背景を知るうえで重要なことは、直接聞いておきたかったでしょう。
私たちも、普段の生活で親が子どもにあれこれ話すこともあまりなかったりして、こういうことは多かれ少なかれ起こります。そして普通は、親が亡くなると子どもが知る機会は永遠に失われてしまいます。
私たちは自分の何を未来に残せばいいのでしょうか。
一分一厘舎 My History Video が作るのは壮大なファミリーヒストリーではなく ”一代記”ではありますが、このような視点も大事にして制作したいと考えています。