いざという時、救急車を冷静に呼べるか-『NHK エマージェンシーコール~緊急通報指令室~「東京」』

(ネタバレを一部含みますのでご注意ください)
自分史ビデオや終活動画を制作している当舎は、皆さまがいつまでも健康で、ささやかな人生を末永く送れることをいつも願っています。
救急車を呼ぶこともなく健康で暮らしていればそれだけでも幸せだと思いますが、いつかやむを得ずにお世話になることがあるかも知れません。そのとき冷静に対応できるかどうかを考えさせてくれるTV番組が放送されました。
10月10日にNHKで放送されたドキュメンタリー『エマージェンシーコール~緊急通報指令室~「東京」』。実際に発生した厳しい状況が電話によるやりとりでまざまざと表現されていて、私たちにとってすごく参考になる番組だと思いました。
警察や救急を取材した番組は民放で何度も放送されていますが、NHKでは珍しいと思います。この番組では民放のようにナレーションが入ったりスタジオでタレントがコメントするようなことはなく、通報者と指令室にいるオペレーターのやりとりが淡々と映し出されています。冒頭にテロップで「プライバシー保護のため、通報は加工・吹き替えし内容を一部変更しています」と表示されていますが、全く架空のやりとりを創作したものではないので、緊迫感がダイレクトに伝わってきます。
ナレーションがあると、制作側が映像そのものでうまく表現できていなくても、また視聴者が真剣に見ていなくても、内容を手っ取り早く伝えることができますが、「ここはこう見てください」というようにひとつの視点を押しつけることにもなります。タレントがいれば番組をおもしろおかしくできるかも知れませんが、現場の緊迫感が薄れてしまいます。
この番組はナレーションなしで、かつ余計な演出を加えずに構成されているので、視聴者が番組の内容に没頭してそれぞれの見方で見ることができ、さらに現場の空気感も感じられて良かったです。
蛇足になりますが、当舎の自分史ビデオや終活動画もこれと同じ理由で、原則的にナレーションなしで制作しています。
オペレーターが緊迫した様子の通報者やいやがらせ電話の常習者に対してさえ、冷静に根気強く対応を続けている姿には頭が下がります。しかしこの番組が伝えようとしているのはそれだけではなく、実際の通報シーンで展開されていることを私たち自身が参考にできるよう、プライバシー保護の問題もクリアして開示してくれたのだと思います。
私がとくに印象的だったのは、ある通報者が電話の向こうで本当に動転してしまっている姿と、2人の通報者が動転のためうまく連携できなくなっている姿でした。
すごく動転した様子が頭に焼き付いているのは二つの事例です。一人は動転して自宅の住所をど忘れしてしまいオペレーターに伝えることができないという場面でした。「自分ならこんなことはあり得ない」と思う方でも、実際そういう局面に置かれたら果たしてどうか、また家族が通報するときは大丈夫かと考えてみて、気になる方には教訓になります。この事例では通報者の氏名をもとに指令室側で住所を割り出すことができて、オペレーターが読み上げた住所を本人が確認していました。
もう一人は息子さんの緊急事態で通報したお母さんで、完全に動転し、ある種絶望感も感じておられるのか、何も冷静に考えられなくなってしまった姿です。取り乱した声の様子から深刻さと切迫感が恐ろしいほど伝わってきます。オペレーターは根気強く丁寧に話しかけながらお母さんをなんとか落ち着かせ、応急処置の行動を少しずつ引き出していきます。電話で長いやりとりをしているうちに救急車が自宅へ到着し、そこでオペレーターとの通話は終わりましたが、その後どうなったのか心配な事例です。
2人の通報者がうまく連携できない事例というのは、子どもの緊急事態で通報したご夫婦です。電話の向こうからご主人と奥さんがいがみ合っている声が聞こえます。お二人ともお子さんを助けるため必死なのです。オペレーターが冷静に奥さんへ応急処置の方法を教え、奥さんがそれに対応している間に今度はご主人へ話しかけて別の対応をお願いし、うまく手分けしてもらうことができて、長い通話中にお子さんの容態が無事回復します。自分がもしこういう現場に居合わせたらこのように冷静に周りの人と協力できるかどうか、すごく考えさせられます。
これまで救急車を呼んだことがない方も、今後いつか呼ぶかも知れません。高齢になると心配も増えるかと思います。いざ呼ぼうとした時、119番へ電話する私たち自身や家族がどんな精神状態になり、どんなやりとりをしてしまう可能性があるかをあらかじめ想定しておくことは、リスク対策の観点で大事なことと思います。
この番組は私たち自身が教訓として知っておきたいことを伝えてくれたと思います。
まだご覧になっていない方は、機会があればぜひ一度ご覧になってください。
※放送から一週間はNHKプラスで配信されています。
当舎は自分史ビデオと自分史ムービー・自分史動画、終活動画と終活ビデオ・終活ムービーを同じ意味で考えております。