ある父親の思いと人柄を描いたCMが秀逸! 

父親は「灯り」のようなもの

 最近TVで見かけるCMで、息子が就職で家から独立するにあたり、引越荷物を送り出して高速バスで出発するときの父親・母親とのやりとりをドラマ仕立てで描いているものがあります。昨日も「news zero」の後ろのほうで見かけました。
ここに出てくる父親の描かれ方が秀逸だと思ったので、そのことを書きたいと思います。

 調べてみたら、このCMは第一生命の『幸せの道「息子の旅立ち」篇』であることが分かりました(同社のCM放映ニュースリリースはこちら
実写部分は計15カットで構成されています。

フィクションですのでここに出てくる父親は「架空の父親」なのですが、私もひとりの父親としての目線で見て「分かるなー」と思うのです。
『幸せの道「息子の旅立ち」篇』30秒版はこちらいつまでUPされているか分かりませんので、リンクが切れていたらご容赦ください)

 家の中で母親と引越荷物を整理しているときに出てきた写真アルバムを広げて、父親が自分の写真を小さい頃からたくさん撮り続けてくれたことを今さらながら知る息子。運送トラックの近くにいる父親を二階の窓から見下ろします。
父親は息子に直接声をかけたりしません。そういう性格なのです。しかしバスに乗った息子に対して外からひと言だけ、 "口パク" で伝えるシーンがあります。
その口の動きで、「頑張れよ」と言っていることが視聴者にも分かります。「親父らしいな」とでもいうようにうっすら微笑んで、頷く息子。それを見て微笑み、頷き返す父親。ここが最高です。
言葉に出して言わなくても、父親の息子に対する思いがにじみ出ています。そして息子は父親の思いを理解しています。

 これでも十分に伝わってくる構成なのですが、今回調べてみたら、TV放映されている30秒版とは別に同社WEBサイトやYouTubeだけで見ることができる60秒版・120秒版も存在することが分かりました。(60秒版はこちら。120秒版はこちら

 その内容はネタバレになるので詳しく書きませんが、30秒版には出て来ない「息子のある行動」と、そのことを後で知った父親の姿が描かれています。
父親は息子に自分の思いが確実に伝わっていることを知って、安心したかのように少し微笑みます。
私ははからずも、そのシーンでちょっと泣いてしまいました。
「お父さん良かったね。まずはここまで長い間御苦労様でした」という気持ちです。

 120秒版ではそれに加えて、母親が思ったことをその場でポンポン言う人であること、父親がそれとは対照的におとなしい性格であること、そして息子はそれらをよく分かっていることがていねいに描かれています。
3つの作品を見比べてみると、それぞれの編集意図がよく分かります。
こういうCMは、同じような人生経験を持っている世代の人でないと作れないのではないかと思います。
BGMは女性ボーカルの優しい声で、父親と息子を称えているかのような感じがして、これもとてもいいです。

 父親というもの、あるいは男というものは「無口で、不器用」なのでしょうか。
昭和のCMで「男は黙って、サッポロビール」というのがありましたね。三船敏郎が渋い声のナレーションでそう言っていました。
いまこのCMを流したら、視聴者はどんな反応をするでしょうね。若い女性は「訳わかんない」「何それ、ウケるー」とでも言うでしょうか。
昭和の時代は、何も違和感はなかったと思います。

 最後に上の写真についてですが、これは私が以前読んだ本に書かれていた内容に由来します。
その本で著者は自分の父親のしていることを反面教師として描き、「自分はそうなりたくない」と思って生きてきたことが書かれています。
しかしあとがきで、"父親は無口ではあったが、例えば暗い家の前で灯りを持ち、自分がいつ来てもいいようにじっと静かに立っているかのような、素晴らしい人だった" というようなことを書いています(正確な文章は覚えていませんがそういう意味の言葉です)。
今回のCMでそのことを思い出し、この記事の写真を「灯り」にしました。
CMの写真は著作権の関係で使えませんしね。(笑)

「父親とは」「家族とは」「人生とは」。
それらについて、いろいろと考えさせてくれるCMでした。

 

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