アントニオ猪木のNHKドキュメンタリーはまさに「自分史ムービー」 

燃える闘魂・赤いタオル

(ネタバレを含みますのでご注意ください)

 3月2日にNHKで放送された『燃える闘魂 ラストスタンド ~アントニオ猪木 病床からのメッセージ~』を見ました。
私は熱烈なプロレスファンではないのですが、それでもモハメド・アリ戦は世紀の一戦としてTV中継をリアルタイムで見た一人です。次の日の学校はその話題で持ち切りでした。皆んなが同じTVを見て翌日話題にしたというのも昭和らしくて、懐かしい思い出です。

 実は、この番組の存在は知りませんでした。
『ニュース7』のあとに番組が始まり、闘病中の老けた弱々しい姿に愕然としてしまい、そのまま引き込まれるように最後まで見たという次第です。
もう79才。100万人に数人しか罹らないという未知の難病と闘っているそうです。

 『燃える闘魂/アントニオ猪木のテーマ』がBGMで繰り返し流され、病院でリハビリをしている最近の様子、生い立ち、ブラジルの落花生畑で力仕事をしている姿、力道山との出会い、17才でプロレスラーになった時の話、手にした主なタイトル等々、人生の歩みが次々と紹介されていくのを見ていて「これは明らかに、猪木さんの自分史ムービー・自分史ビデオだ」と思いました。

 関係の深い方々(棚橋弘至、古舘伊知郎、村松友視、秘書さん、藤波辰爾・・・等々)への綿密なインタビューもあり、それぞれの方の話から猪木さんの人柄・人物像がクッキリと浮かび上がります。
それはプロレスで絶対的な強さを見せるだけではなく、どこへ行ってもジョークを飛ばして周囲の人を笑わせ、元気にしようとサービスする姿です。
宮戸優光は「人と会うときは皆んなを幸せに(と教えられた)」と言い、古舘伊知郎は「いつまでたっても、いつも全身が "アントニオ猪木"」と言います。

 2年前に先立った奥様の田鶴子さんは、闘病中の猪木さんを案じて猪木を人前に出してあげてください。注目されることで元気になるからと周囲に頼んでいたことを、秘書さんが明かします。いつも周りに元気を与えていた猪木さんですが、今度はご自身が元気を必要としていたのですね。

 一方、最初のほうのシーンでは、猪木さんは入院中に水を "吸いのみ" で一口飲んだあと、こう言っています。
本当はこういう映像は見せたくなかったんですけどね。これもひとつの強いイメージばっかりじゃなくて、こんなに脆(もろ)い、弱い(自分を)・・・。どうとるかは知りませんよ、見た人たちが。そういうひとつの人間として、そういう場面があってもいいかなって。
NHKプラスでもう一回見たら、そういったいろんな話が全て繋がりました。そして泣けました。

 退院したあと、最後のシーンで猪木さんはこう言います。
「元気になったら、皆んなとおいしいものを食べ歩きたい。東北のおいしいもの、大阪のおいしいもの・・・。」
まだ死ぬ訳じゃない―。そう思った人は多いでしょう。
元気になって、もっともっと長生きしてほしいと思います。

いい番組であり、いい自分史ムービーでした。

※2022年10月1日、猪木さんの訃報が飛び込んできました。5月には十和田にお墓を建立し、8月には国技館で24時間テレビ45『会いたい!』に出演したとのこと。それらもお別れの準備だったのでしょうか。もっと長生きしてほしかったので、残念でなりません。ご冥福をお祈りいたします。

 

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