終活世代の健康管理(10)ヘルプマークを取り巻く現状はとても複雑
終活世代の皆さまの健康管理に関する情報をお伝えするとともに、それに関連するご自身のご経験や思い出が想起されたら、その話を終活動画を制作するときに入れてはどうでしょうかというご提案でもある、「終活世代の健康管理」シリーズ。
今回はそのひとつ、ヘルプマークに関して話題になった出来事から考えたことについてです。
そもそもヘルプマークについて知らないことが多すぎる
椎名林檎さんがアルバムの特典で付けようとしたヘルプマークに似たデザインのグッズが、本物とまぎらわしいと批判されて撤回に至りました。
特典グッズだと知らない人が間違って支援を申し出たり、本物のマークも怪しまれることになりかねず、こうしたグッズをおもしろがって付けるのは当然控えるべきです。
しかし考えてみると、私も数年前からヘルプマークを付けている人を見かけたことはありますが、「どんな人が付ける対象なのか」や「周りの人は何をすれば良いのか」を詳しく正確に知らないことに気付きました。そこで今回調べてみたところ、このマークを取り巻く状況はかなり複雑であることが分かりました。
まずヘルプマークの対象者と周囲の人のサポートについてです。このマークを最初に作った東京都の説明から引用します。
対象者
義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としている方
ヘルプマークを身に着けた方を見かけたら
・電車・バスの中で、席をお譲りください。
・駅や商業施設等で、声をかけるなどの配慮をお願いします。
・災害時は、安全に避難するための支援をお願いします。
(東京都ウェブサイト「ヘルプマーク」より抜粋・引用)
対象者にはいろいろな状況の人が入っていて覚えきれませんし、外見では分からないものもあります。
しかし他の場所に "外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている方々" と書いてあり、それでようやく少し理解できました。
これが一緒に書かれていないと非常に分かりにくいです。
その方の外見では分かりにくいということが、何のマークなのか理解しにくい理由でもあります。
それに十字とハートの絵だけが描かれているので、何を意味しているのかが余計に分かりにくいです。
見かけたときの3つの対応の中に「声をかける」とありますが、いきなり「困ってますか!?」などと声をかけるのかと疑問に思っていると、他の場所には "困っているようであれば" と書いてあり、ようやく納得しました。
これも一緒に書いていないと分かりにくいです。
横浜市など、これらが分かりやすく書いてある自治体もあります。
内閣府のウェブサイトには「障害者に関係するマークの一例」というものがあり、ヘルプマーク以外にもさまざまな団体が作成したマークがたくさん並んでいます。
見たこともないマークもあり、知っているマークでも詳しい内容は分からないものばかりで、世間に広く知られているとは思えませんし、種類が多すぎることも理解が進まない原因のひとつだと思います。
一般市民が知らなければ作った意味がありませんので、周知を強化したり、場合によってはマークを統合して数を減らすなどの工夫がもっと必要です。
へルプマークの話に戻りますが、これを付ける対象の方の利用状況を報道等で調べてみると、役に立っているという方がいる一方で、周囲の人にあまり知られていないとか、付けていても実際に役に立ったことがないとか、サポートしてほしい内容が複雑なのでマークだけでは伝わらないとか、逆にマークを見た人から心ないことを言われたとか、さまざまな思いを持っている方がいます。
ヘルプマークの有無にかかわらず、支援の必要な人がいたら支援する
このマークができてから10年あまり。
年々、付ける人は増えてきていますが、「私は付けない」、あるいは「付けるのをやめた」という人も残念ながら増えているようです。
また、支援をする側である一般市民について調べてみると、これも複雑な状況です。
マークの意味を知らなかったり詳しく理解していない人はまだまだ多いですし、知っていてもどのように接したら良いのか分からない人、見た目では分かりにくいため本当に支援が必要なのだろうかと思う人、フリマサイトで売っているなど誰でも簡単に入手できるので支援ねらいの「偽装」かと思う人、自分も仕事で疲れていて電車で座りたいがマークの対象でなく不公平だと思う人等々、本当にいろんな思いを持っている方がいます。
それと「私、病んでます」というように一種のファッションで付けている人もいるようです。
もしかしたら椎名林檎さんのグッズもこれに近い感覚なのでしょうか?
私は電車で座っていてお年寄りやマタニティマークを付けた方などが近くに立ったら、すぐに席を譲っています。
目を閉じていると前に立っていても気づかないので、とくに駅で人が入れ替わるときはおちおち眠っている訳にもいきません(笑)。
それでも電車で目をつぶって座っている人は多いですね。爆睡している人もいれば気づかないふりをしている人もいるでしょうし、疲れていて座っていたい人もいるかと思います。
私もすごく疲れた日に運よく座れたら、正直なところ「今日は譲りたくない」という気分にもなります。
マークを付けている人だけが善意の対象ではなく、障がい等がない人でも体調を悪くして支援がほしい時というのは当然ありますので、そうした人にも目を向けないと片手落ちになります。
いろんなことで大変な世の中ですので、以前よりも疲れている人やちょっとした心づかいを望んでいる人はとても多いように思います。
これらのことから、へルプマークを付けているかどうかに関わらず、また障がい者等だけに限らず、シンプルに「支援の必要な人がいたら支援する」という、日本人なら当たり前に持っているはずの原点をもう一度確認することが大事ではないかという気がします。
もちろん具合の悪そうな人がヘルプマークを付けていればいっそう分かりやすく、躊躇せずに歩み寄れるので、マークが必要ないとは申しません。
それでも、このマークにあまり多くを期待してもうまくいかないかと思います。
ヘルプマークの対象でない人が偽装で付けることや、逆に偽装ではないかと疑うこと、マークを付けている人に心ない言葉を言い放つこと、電車で立っても大丈夫な人が席を全く譲らないこと、支援が必要な方があきらめたり遠慮すること、逆に支援を受けた時に感謝もなく当然のような顔をすることなど、人の道に沿わないさまざまなことが減っていくことを切に願いたいです。
皆さまはヘルプマークや、「困っている人を助ける」「助けてもらった」などのことについて、どんなご経験や思い出をお持ちでしょうか。
そのご経験や思い出を自分史ビデオや終活で作成する動画にいれませんか。
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吉川 友清
一分一厘舎代表。
映像作家、終活ライフケアプランナー・防災士・援農ボランティア。
2021年3月より自分史動画・終活動画制作専門の「My History Video」サービスを提供中。
制作・撮影・編集ほか、事業全般を担当している。