ドキュメント72時間 2025年前半で特に印象的な4作品~自分史動画の視点から 

かけそば

(写真はイメージです)

 2025年も半年が過ぎましたので、年度の前半で印象深かった作品を4つ、自分史動画・終活動画を制作している者の視点であげてみたいと思います。

 2024年の視聴者投票で第一位に選ばれたのは「国道4号線 ドライブインは眠らない」でした。
年末スペシャルでその結果が発表された直後から、本ウェブログで以前に投稿した記事『ドキュメント72時間「国道4号線 ドライブインは眠らない」は神回。自分史動画と同じ視点の印象的なシーンが満載』の閲覧者数が爆発的に増えました。
今もなお、多くの方が閲覧しに来られています。心より御礼申し上げます。

 2024年は結局、ドキュメント72時間関連ではその1本のみの投稿にとどまりました。
しかし一位の作品を占うつもりで書いたのではなく、その作品は自分史動画や終活動画を制作する立場から「人生の生きざま」「親子の絆」「人の人情」などが強く感じられたため、自然と筆が進んで記事にしたものでした。

 2025年も、そうした視点は同じです。
半年が過ぎたこのタイミングで、年度前半に放送された作品の中で特に印象深かったもの4つについて、まとめて書きたいと思います。

(ネタバレ多数のため、まだ視聴していない方はご注意ください)

 美川憲一のヒット曲「柳ケ瀬ブルース」(昭和41年)で全国に知れ渡った岐阜・柳ケ瀬。
その中にある「スタープレイス柳ケ瀬商店街」がこの作品の舞台です。

 かつては多くの人で賑わった商店街も、地元繊維産業の衰退(1990年代)や2012年の岐阜清流国体による街の「浄化作戦」で風俗店が激減したことなどから、現在はシャッターの閉まった店舗ばかりという状況に。

 本ウェブログでは『「シャッター通り」へのノスタルジー』という記事も公開しており、こうした場所には強い関心を持っています。 

 失われゆく記憶や情景を残したいという思いは、人の人生も同じ。
自分史動画や終活動画に通じるものがあります。

 かつての賑わいや人々の生き生きとした姿、熱い思いをもっと感じたいと思いました。

 現在も店を続けている人や出入りするお客さんへのインタビューが中心になっています。
閉店後のキャバレーの話は出てきたものの、そのような「シャッターの内側にいた人」の話がたくさん聞きたかったです。

 それでも、アーケードの天井に並んだ膨大な数のネオンサインを、番組のためにすべて点灯してくれたシーンは圧巻。
過去の繁栄や熱気が鮮やかな色彩で蘇ります。

 当時の人の心意気を、ネオンが店主や客たちに代わって、音もなく語っているようでした。

 川崎駅近くにある老舗の大衆食堂・大衆酒場「丸大ホール本店」。
安くて旨く、昼間から賑わうこの店では、混雑ゆえの「強制相席」が当たり前。

 その仕組みが、都市部の酒場ならではの魅力を生み出しています。

 一人で来た訪問看護職の女性。

 「家で一人で飲むのはおいしくない、人がいたほうがいい」と語ります。
でも、職場の人と来たら、愚痴が出たり職場の話題になってしまう・・・。

 ここでは知らない人と相席して「これおいしいね」などという他愛無いやりとりで癒され、「今日一日の自分がハッピーで終われる」とのこと。

 人生を歩んでいく中で、こういうお店が自分の傍らにあると、何かとても救われる気がします。

 男も女も昼間からビールやハイボールをジョッキで飲む姿に、なんとも人間臭くて暖かい世界を感じました。

 1976年創業、24時間営業で一杯290円という博多ラーメン店。
観光客がよく行く中州の屋台など繁華街からは離れたところにあり、地元の人たちに長く愛されてきたようです。

 30年くらい年間360日は通っているというおじさん、50年前の高校時代から来ているという68才のお父さんなど、それぞれがこのお店に思い出を持ち、「日常」として通い続けています。

 気になる味のほうはというと、「懐かしの味」「思い出の味」「値段なりの味」「あっさり。今風のトンコツとは違う」「特別な所じゃない。日常の味」とのこと。
おそらく、とても優しい味なんでしょう。

 最後に登場した高齢の女性は、猫舌のためラーメンは苦手だそうで、餃子を注文します。
それでも、ラーメンを食べている人を見るのは好き。

 「みんな、個性のある食べ方しとるけん」

 この一言で、ここへ来る人々の人間模様がすべて包み込まれました。
たったひとつの言葉やしぐさでさえ、作品の印象を決定づけることがあります。
この言葉はとても深くて、作品の印象も爆上がりしました。


 ラーメンでなく餃子でしたが、素晴らしい「最後のシメ」になりました。

2025年前半の中で、最も印象に残ったのがこの作品です。

 舞台は五所川原で夜だけ営業する、そばとおでんのお店。
ふさえさん(81歳)が47年前に工業高校前の屋台で始めて、今はプレハブに。

 看板もなく、営業中の赤提灯だけが目印という、“知る人ぞ知る” 地元のお店です。

 親子3代のお客さんもいたり、ふさえさんは長年たくさんの常連客と接してきましたが、昨年心筋梗塞で入院。
今はお店に出るのを短時間にして、娘さんが店番をサポートしています。

 番組の冒頭で、お客さんと取材班との会話が始まります。

 「津軽弁で『おいしい』ば『めんだ』ってす」「めんじゃ?」「めんだ。どっから来た?」「東京から」「へば、わがねもな」。

 取材班が東京から来たということで、インタビューを受けるお客さんの多くは東京を意識して話し、地元と東京に対するいろいろな思いが最後まで交錯していきます。

 その点で、冒頭のこのシーンはとても重要だと感じます。

 保育園から高校まで一緒に過ごしたという友だち連れ。

 それぞれが『五所川原 立佞武多』で太鼓や笛などを担当しているため、一人は税理士で盛岡にいるものの、そのうち地元へ帰ろうかなと。
もう一人は東京の大学を出て、就職は迷うことなく地元を選択。

 祭りの様子をスマホ録画で見せてくれて、「じゃわめく(血が騒ぐ)」「自分の祭りに誇りを持ってる」と言います。

 その姿はまるで『新日本風土記』のワンシーンのように、郷土愛であふれていました。

 友人同士の男性2人。

 一人は埼玉で就職し、連休を利用して帰省で戻ってきたと。
もう一人は大学へ行きたいと親に言えず、地元の市役所に勤務。

 「古い考えだけど、長男なんで家にいないと」「行きてえ、東京さ」「誰にも何も言われず、好きなように生きられる」――。

 東京への憧れと切なさがリアルに語られました。

 焼き鳥屋の商売が終わって立ち寄った男性。

 東京で建築関係の営業マンをしていたらしく、生まれも向こうだそうですが、50代の時に奥さんの地元であるこちらへ転居したと言います。
しかし再就職で苦労し、移動販売車の焼き鳥屋を始めたそうです。

 きれいな標準語で話す方です。
語尾のキレが良くて丁寧な語り口は、営業当時に磨いたのでしょうか。
この方の東京に対する誇りを感じました。

 りんご農家の姉と東京に住む妹の姉妹。

 今日は妹さんが帰省してきたので、懐かしいこのお店に来て、そばを食べておでんをテイクアウトするそうです。

 お姉さんは「りんごの農作業は大変なので継ぎたくないと思っていた。本当は遠くへ行きたかった」「札幌に就職が決まったんだけど、母が『やっぱり行かないで』と言うので諦めた」と。
それでも今はもう、りんご栽培が大好きだと言います。

 一方、妹さんは地元にいてもいい仕事がないし、東京行きはむしろ仕方のないことで反対されなかったと。

 結局、落ち着くべきところに落ち着く――。人生とはそういうものかも知れません。

 昼間は管理栄養士として働き、最近は夜もスナックに勤め出したというシングルマザーの女性。

 娘さんと2人で暮らしてきたのに、その娘さんは先生になりたいとの夢を持って東京の大学へ。
スナックでの仕事は、娘さんに仕送りするためだそうです。

 娘さんと離れてすごく寂しいと言いますが、
「どんだけこっちがへじね(辛い)思いしても、娘が幸せならさ」。

 これと同じ思いの親は昔から星の数ほどいると思いますが、やはり心に刺さります。
実際に言葉に出したことで聞いている人の共感を生み、胸を打ちます。

 地元に居続けたり都会へ出たり、思いどおりの道に進めたり進めなかったり、「もしこうだったら」と想像したり・・・。
そして、それを見守る家族がいたり・・・。

 五所川原に限らず、全国どこでも、そして世界じゅうで、地元で生きる人と都会へ出る人それぞれの事情と人生があり、地元愛と都会への思いが交錯しています。

 このお店では、そんな大きなテーマが静かに、力強く描かれていました。

 "いろいろあったけど、これで良かったんだ――"

 できることなら、自分の人生をそう思えるように生きていきたいものです。

 当舎の自分史動画・終活動画も、お客様がそう思っていただけたら、と願いながら制作しています。


 なお、この小さなお店に「聖地巡礼」で多くの人が押し寄せると、ふさえさんや娘さんは売るものが早々に尽きてしまったり、地元のお客さんも居場所がなくなるかも知れません。
できればそっと見守るだけにしておきたいものです。

 後半の7-12月はどのような作品に出会えるのか。とても楽しみにしています。

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代表者写真

一分一厘舎代表。
映像作家、終活ライフケアプランナー・防災士・援農ボランティア。
2021年3月より自分史動画・終活動画制作専門の「My History Video」サービスを提供中。
制作・撮影・編集ほか、事業全般を担当している。