自分史ビデオとの接点(4)「シャッター通り」へのノスタルジー 

シャッター街

 自分史ビデオや終活での動画を作るときの視点として、参考になる事例をご紹介する「自分史ビデオとの接点」シリーズ。
第4回は日本全国にある古い商店街の「シャッター通り」についてです。

 昭和30~40年代に子ども時代を過ごした私は、その当時のような古い街並みに興味があります。
とくにアーケード街や古い街の目抜き通りで、かつての店舗がその痕跡を残したまま軒並み廃業しているのを見かけると、賑わっていた当時の姿をタイムマシンで見る映像のように想像したりします。

 幹線道路が新設されて人の流れが変わり、大型店舗が黒船のごとく現れ、有力企業が従業員や家族とともに撤退し、地場産業の衰退で都会への人口流出が続き、団体慰安旅行が減って観光地が取り残される、というような社会構造の変化を、私たちはこの数十年の間に目の当たりにしてきました。
それらが街並みも人の生活も大きく変えてしまいました。

 「シャッター通り」という言葉はよく「再生」「地方創生」というキーワードとともに語られ、社会問題だと言われてきました。
新しいテナントの誘致が進んで再生した成功事例もあるそうですが、一方では「廃業後も2階に住んでいるので立ち退くつもりはない」「店は倉庫として今も使っている」「更地にすると固定資産税が高くなるので取り壊す予定はない」「年金で生活は維持できている」「だから元の店主は今の状態でとくに困っていない」とか、あるいは「若い起業家や芸術家を誘致しても活動が維持できず撤退してしまう」「再生プロジェクトの大半は根付かずに失敗した」などの指摘もあります。
実態は傍目から見るよりもなかなか複雑な状況のようです。

 私は、昔それらの店が商売していた頃の街の活気、生業として収入を得てきた店の方の思い、客としていつも出入りしていた地元の方の暮らし、そういう過ぎ去ってしまったことに対して一種の郷愁を感じるのです。
これはノスタルジーです。

『三丁目の夕日』より少しだけ後の時代ですが、同じような感じです。

 当舎の地元である横浜には「新横浜ラーメン博物館」があります。
昭和の商店街を再現した内装で開業時から話題ですが、これができたのは30年ほど前の1993年。
その頃には既にこうした昭和レトロに対するノスタルジーを人々が感じていたことが分かります。

 ノスタルジーは過去の時代を知っているから感じるもので、長年生きてきた証しでもあります。
昔の街の様子やそこで生活していた方々の姿を想像することにより、自分の子ども時代の記憶や人生の中の残像をさがしているのかも知れません。

 同時に、その当時の街並みや建物が取り壊されず今も残っているということで、何かほっとします。
なくなってしまえば二度と再現することはありません。それはとても寂しいことですよね。

 あなたはシャッター通りを見たときに、どんなことをお感じになるでしょうか。

 このような思いは、自分史ビデオや終活で作る動画にも通ずる部分があります。

 人は皆、いつかこの世から去ることになります。
その時に何かを残していないと、その人のことは永遠に忘れられてしまいます。

 遺影があっても、写真は何も語ってくれません。
生きている姿と声がありのまま残せるのは、動く映像、動画だけです。
そして映像の電子データを保管しておけば、建物のように惜しまれながら取り壊されて無くなることはありません。

 ですから当舎は自分史ビデオや終活で作る動画の制作サービスを行っています。

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私にとって自分史動画の制作は街道歩きと共通する部分があります。旧街道の魅力は古いものが残っているところです。いったん無くなってしまうと二度と復元できないものを後世へ残していくことは大事です。人が生きてきた中でのいろんな思いや人生の歩みを記録して残すことも同じように大事なことだと思います。

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一分一厘舎代表。
映像作家、終活ライフケアプランナー・防災士・援農ボランティア。
2021年3月より自分史動画・終活動画制作専門の「My History Video」サービスを提供中。
制作・撮影・編集ほか、事業全般を担当している。