「学校でマスクを外せない」子どもたちの問題にどう対応していくか 

マスクを外せない子どもたち

 普段、ビデオ撮影を行っていて難しいのは、被写体となる方々の撮影同意を得ることです。プライバシー保護が重要な社会になり、顔や本人と分かる姿を撮影されることを拒否する方は以前よりも増えています。
自分史動画の被写体はご本人やご家族など身近なごく少人数の方々ですので問題ないのですが、特にイベントや街中での撮影では気をつかいます。
しかしコロナによってマスクを着用するようになったことで「マスク姿なら撮影されてもいいか」と思う方も多く、撮影同意が得られやすくなっています。マスクはプライバシーを守ってくれるものでもあります。


 そんな中、このところの暑さで熱中症にかかる人が増えている一方で、学校の体育の授業でマスクを外さない(というよりは、外せない)子がたくさんいるというニュースをTVで見て、コロナが引き起こした問題の深刻さを改めて感じました。

 グラウンドで先生が「マスクを外してください」と呼び掛けると、生徒たちは「強制ですか?」と聞き返します。先生は問題化するのを恐れてか、「いえ、強制ではありません」とトーンを下げ、生徒たちはそのまま着け続けます。これでは先生も熱中症が心配で気が気ではないでしょうし、そもそもマスクごしに表情を読み取るのは難しく、教育上のコミュニケーションにも苦労されているのではないでしょうか。

 インタビューで生徒たちが言うには、入学以来ずっとマスク着用が続いていて、学校関係でマスクを外した顔を見せたことがあるのは仲のいい友達くらいだそうです。つまり、今さらマスクを外すと「あなたはそういう顔だったのか」ということになるので、恥ずかしくてとても外すことができないというのです。昼食時はどうしているのだろうと思いましたが、おそらく全員が席で前を向いて座って食べているのでしょうし、口元を隠しながら食べたりもしているのでしょうね。


 マスクを外せないという問題は以前からも指摘されていましたが、5月頃からこれに関する報道が急に増えています。
自分の顔に自信のある人は少ないですし、何らかのコンプレックスを持っている人が大半だと思いますが、それでもコロナ前は年じゅうマスクで顔を隠す人はほとんどおらず、顔を見せることには慣れていたと思います。
それがコロナのまん延によりいつも顔を隠せるようになって、「もう下着のようなものです」と言う人が現れたり、マスクを「顔パンツ」と呼んでいる人さえいます。

 ところが5月に基本的対処方針が変更されて、屋外など一定の場合はマスク着用が求められなくなり、さらにはこの暑さで熱中症対策として可能な場所では積極的にマスクを外すように言われて、顔を隠し続けるのもだんだん難しくなってきたのかも知れません。

 子どもたちが自分の顔を見せられないまま大人になると将来もすごく困るだろうと心配しますが、一方、ここで急にマスクを外すことを強要されたら学校に行けなくなる子も新たに発生するだろうと思います。

 さらに同調圧力というやっかいな問題もあります。これまではマスクを着けていない人が無神経だと白い目で見られる風潮がありましたが、もしかすると今後は一定条件下でもなおマスクを外そうとしない人のほうが怪訝に思われるようになる恐れもあります。学校では生徒間でマスクを外させないようにお互い牽制し合うことにもなりかねません。
「マスクを外すこと」も「引き続き着けること」も、そのどちらについても、集団内で村八分となるのを恐れさせて周囲と同じ行動を事実上強要するような同調圧力はなくさなければいけませんよね。


 学校としてはこの問題にどう対応していくのか、難しいことでもあり解決策はまだ定まっていないと思われますが、子どもたちが将来生きていく力を身に付けてもらうのが教育の目的であるなら、これまでの感染拡大防止一辺倒の方針から変えていく必要があります。例えば入学直後より生徒が自然に顔を見せ合える機会を組み込むなどして、マスクを着けないことに慣れていける工夫を行っていくことも一案かと。子どもたちの未来を思えば、これは学校だけでなく私たち大人が一緒に考えていくべきことと思います。