終活するうえでとても気になる「人生100年時代」は本当か?グラフで見る現在と将来 

人生100年時代というけれど

 終活するうえでとても気になる「人生100年時代」という言葉を、数年前からよく見かけます。
テレビCMでこの言葉を聞くと、既にそういう時代が到来しているように聞こえます。
長生きできるのならありがたいと思ったり、老後資金が心配になったりもします。
100才まで生きるのであれば、自分史動画を作る時期も90代くらいで十分、ということになるのでしょうか(笑)。

 しかし、「100才まで生きられるなんて本当?」「自分の感覚ではもっと短いと思うのだが・・・」という方も多いのでは?
そこで今回、「人生100年時代」とはどういうことか、また、いつそうなるのか、今の現実はどうなっているかについて調べてみました。

 「人生100年時代」は、リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略』(日本語版は2016年10月発売、東洋経済新報社)で出てくる言葉で、「先進国においては2007年生まれの人の2人に1人が103才まで生きる時代になる」 というものです。
2007年生まれといえば、100才になるのは2107年です。
つまりそういう若い世代の話で、実現するのは遠い先のことです。

 「なんだ、やっぱり自分たちのことじゃないのか」と思われたでしょうか。
信託銀行などのテレビCMは基本的に大人向けですので、自分たちのことかと錯覚させられてしまいます。

 それにしても、この本には根拠や算出方法があまり詳しく書かれておらず、この説が果たして妥当なのかどうかが分かりません。
そこで、日本のデータを使ってざっくりとしたシミュレーションを行い、これに近い結果が出るのかどうか確かめてみたいと思います。

 厚労省が毎年作成している「簡易生命表」のデータを使って、ざっとシミュレーションしてみました。

 ひとつは「平均余命」というデータを使用します。
平均余命は、各年令の人がそのあと生存すると考えられる年数の平均をいいます。
ここではその年数に年令を足して「何才まで生存するか」という表示にします。
ちなみに、これと似た用語の「平均寿命」は、そのデータの年に生まれた0才児が何才まで生きるかの平均(つまり0才児の平均余命)ですので、大人の人には直接あてはまりません。

 2007年生まれの人の平均余命を10年毎に調べると、2007年(0才時)で男性79.19才、女性85.99才、2017年(10才時)で男性81.33才、女性87.50才です。
10年間で平均余命が男性2才くらい、女性1.5才くらい伸びています。
将来どのように伸びていくかは正確に分かりませんので、この10年間の伸びを参考にして、今後10年毎の伸びをおおまかに男性+2才、女性+1.6才と仮定しました。

図1:2007年生まれの平均余命推定予測

 その結果、2007年生まれの人の平均余命が100才となるのは女性で2090年代となりました。
男性の平均余命は100才まで到達せず、その少し手前です。
それでも「2007年生まれの人がだいたい100才くらいまで生きる」という本の主張は、
この結果を見ると「当たらずとも遠からず」というところでしょうか。

 しかしながら、平均余命では「2人に1人」が100才まで生きるかどうかは分からないのです。
「平均」とは真ん中ですので「ちょうど半分=2人に1人」と思いがちですが、例えば90才の人の平均余命は「90才まで生きている人の平均余命」であって、89才までに亡くなった人は計算に含まれていませんので、同じ年に生まれた人全員の平均余命や「2人に1人が生きている年令」ではありません。
2007年生まれの人の平均余命が100才になるといっても、100才まで生きる人の割合が「2人に1人」かどうか、つまり出生数の50%かどうかは怪しいところです。

 そこで、今度は「生存数」というデータを使用してみます。
生存数とは、死亡率のデータを使い、出生数に対してその後の各年令で何人生きていると期待されるかを示しています。
この生存数が50%となるときの年令が100才に到達する時期を推計してみます。

 簡易生命表では出生数を10万人当たりに換算して生存数を人数で表示していますので、50%ということは生存数が5万人になる年令を見ます。
2007年生まれのデータがないため、それに最も近い2011年生まれで見てみると、50%になる年令は男性82才・女性88才です。
つまり100才よりもずっと低い80代ということになります。

 ただ、この50%になる年令は男女とも10年毎に2才前後伸びていますので、今後10年毎に男女ともざっくり2才ずつ伸び続けると仮定してシミュレーションしたのが下のグラフです。

図2:生存数50%となる年令

 グラフで2011年のところの伸びが低いのは、主に東日本大震災による影響です。
このグラフで見ると、生存数が50%となる年令が100才に到達するのは、男性2100年頃生まれ、女性2070年頃生まれとなります。
2100年生まれということは、その人が100才になるのはなんと2200年、22世紀の終わり頃です。
それくらい遠い将来のことかも知れません。
ただ、死亡率も年々下がっているため、今後さらに下がればこの100才到達年も手前に近づいてくると思われますが、それでもかなり将来の話になりそうです。

 このように、簡易生命表のデータでシミュレーションすると、2人に1人が100才まで生きるという「人生100年時代」になるのは私たちにとっては遠い先、22世紀頃の話という結果になりました。
やはり「2人に1人が生きている」という条件は、ハードルがかなり高いです。

 気を取り直して、現在60才以上の人たちについて見てみましょう。
簡易生命表で60才・70才・80才・90才の人の平均余命を若い頃まで遡ってみます。
例えば下の男性のグラフで、2021年に90才なら平均余命は94.38才、80才なら89.22才、70才なら85.96才、60才なら84.02才というのがいまの現実です。

図3:平均余命推移_男性

図4:平均余命推移_女性

 一本の折れ線は、同じ年の生まれの人の推移を表しています。
2021年に90才(1931年生まれ)の人は、10年前の2011年・80才時の平均余命は88.39才と、今よりも低い数値でした。
つまり、同じ年の生まれでも平均余命がだんだん伸びていきます。
これはなぜか。

 90才の人の平均余命は90才になった人たちで計算されるので、平均余命は当然90才を超えることになります。
それに対して80才の人の平均余命には80~89才で亡くなる人も一定数含まれているので、90才の人の平均余命よりも短くなります。
それと同時に、死亡率は過去のほうが高いため、過去データの平均余命は現在よりも短いです。
これらにより、同じ年の生まれでも年令とともに平均余命も長くなります。

 なお、グラフを見ると1931年生まれの折れ線が一番上にあるので、下の世代よりも長生きするように見えるかも知れませんが、そうではありません。
2021年に90才の人の10年前・80才時データと、2021年に80才の人のデータを比べると、80才の人のほうが平均余命は高いです。
男性のグラフに赤い補助線を引いてありますが、これをご覧いただくと右肩上がりになっているのがお分かりになると思います。
このように、今後世の中が大きく変化しなければ、下の世代ほど上の世代の平均余命を超えて長生きします。

 長生きする人がいったい何%いるのかという割合については、さきほどと同様で平均余命からは分かりません。

 「健康寿命」とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間をいいます。
WHO(世界保健機関)が2000年に提唱したもので、日本のデータは2001年から見ることができます。
平均余命も重要ですが、健康寿命も実際問題として大事ですよね。
健康寿命が2001年以降どう推移しているかをグラフにしました。

図5:健康寿命の経年推移

 2019年時点の健康寿命は男性72.68才、女性75.38才です。
2001年は男性69.40才、女性72.65才ですので、この18年間でせいぜい3才程度の伸びに留まっています。
この先も新たな要因がなければ急に伸びることはないと思われますので、しばらくは男性は70代前半、女性は70代後半で推移しそうです。
平均余命と比べて健康寿命が意外と低いこと、また平均余命の伸びの大きさに対して健康寿命の伸びが若干小さいことが気になります。
将来的に、生きているが健康ではない年数が今よりも次第に長くなっていくのかも知れません。
これはあまりありがたくないですね。

 最後に年令別の「生存率」、つまり出生数に対して何才頃に何割くらいの人が生きているかを見てみます。
少し生々しいデータですが、避けて通らないほうが良いと思いますのでご紹介します。
総務省統計局の2022年人口推計データによる60、70、80、90才の生存数と、厚労省人口動態調査の1962、1952、1942、1932年生まれの出生数を使用して、これらの各世代の生存率を計算しました。
その結果は下のグラフのとおりです。

図6:年令別生存率2022年

 60才時点では、生まれた人のうち男女ともに9割以上の方が生存しています。
グラフを左から右に見ていくと、生存率は当然ですが次第に下がっていきます。
50%以上の人が生存している年令を見ると、男性は80才ちょっと、女性は80代半ばくらいです。
つまり、人生100年時代が「2人に1人が100才以上生きる時代」というのに対して、今現在で2人に1人が生きているのは男性は80才まで、女性は80代半ばまでということになります。
人生100年時代はまだまだ先のことですね。

 調べた内容は以上のとおりです。
近い将来に人生100年時代が来るという説の裏付けになるデータは、これらの結果からは見つかりませんでした。

 今現在は、2人に1人が生きているのは男性80才まで、女性80代半ばまでです。
2人に1人が生きている年令が100才に到達するのは2007年生まれではなく、ざっくりとしたシミュレーションで男性2100年頃生まれ、女性2070年頃生まれとなりました。
一方で健康年令は男性が70代前半、女性は70代後半で伸び方がやや小さくこのまま推移すると平均余命との差が次第に広がり、生きているが健康ではない年数が長くなっていくかも知れません。

 しかし、仮に22世紀のことにせよ、50%もの人が100才まで生きる時代になると、その中で長生きする人はいったい何才まで生きるのでしょうね。
もはやSFのような世界で、想像がつきません。
老後資金の準備も、100才どころかもっと先までの分が必要になりますね。
そして、そのように長生きしたとしても、健康でいられるのは果たして何才くらいまでか心配になります。

 一人ひとりの寿命は平均どおりになるとは限りませんので、このようなデータはあまり気にせず、毎日をできるだけ大切にして、有意義に過ごしたいものですね。


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