終活動画制作現場雑感(1) 終活動画はよくある「動画」のイメージとは少し異なるもの

自分史ムービー・終活動画の制作現場でふと感じたことを「終活動画制作現場雑感」シリーズとしてお伝えしてまいります。
第1回は終活動画がよくある「動画」のイメージとは少し異なるということについてです。
もともと「動画」という言葉は「写真」と区別するための言葉で、動く映像のことを幅広く指しています。
しかし最近はネット配信動画の普及によって「動画」にひとつの狭い意味合いが付け加わり、「ネットで配信され」「スマホで見る」「おもしろくて」「尺が短い」「誰でも作れる」「お手軽な」ものというようなイメージがあると思います。
そのような動画が毎日大量に出回り、消費されて消えていきます。
分かりやすい例で言えば、私もよくネットで見ている「猫の動画」などです。
一方で、終活動画は広い意味で「動画」であることは間違いありませんが、「ネットで配信され」「スマホで見る」「おもしろくて」「尺が短い」「誰でも作れる」「お手軽な」ものかというと、それらとは少し違うように思います。
ひとつずつ考えてみましょう。
まず「ネットで配信され」と「おもしろくて」についてです。
自分史ムービーや終活動画などの自分史映像は、”お楽しみ” として世間に向けて広く配信することを目的としたコンテンツではありませんし、自分のプライバシーを守るため、誰が見るか分からない一般公開は望まない方が非常に多いです。
従って「ネットで配信され」「おもしろくて」は、通常は当てはまりません。
次に「尺が短い」についてです。
「1分以上の動画は長いと思われる」という調査結果が出る時代になったようです。
自分史や終活関係の動画で、日常のちょっとした様子や "ひと言遺言メッセージ" などをご家族がスマホで撮影すると「尺が短い」ものが多いと思いますが、それらは断片的なショットで、人生の物語がひとまとまりに完成した映像とは異なるものです。
何十年もの人生を振り返って映像で記録するとなると、人生の転機や忘れられない思い出など、重要なものだけを取り上げて撮影でお話しいただいても、相当な量のお話になります。
1日(数時間)の撮影で、お話しされた内容をA4版用紙に文字起こしするとだいたい10枚前後、お客様によっては20枚を超えることもあります。
それらの映像を短く編集しても、例えば3~4分程度ではいかにも省略し過ぎで、十分な内容にはなりません。
いろいろな出来事を経験し、さまざまな思いを抱えながら懸命に生きてきた人生とは、そういうものでしょう。
ですので、「尺が短い」というのもあてはまりません。
「誰でも作れる」「お手軽な」についてはどうでしょうか。
撮影でお話しされた内容のうち、どの部分の映像を取り出して編集使用するかを考える際に、ひとつの文章をそのままそっくり使えれば大変楽なのですが、実際にはそう簡単でないことが大半です。
撮影した一つひとつの話題を見返して、全体としてどういうことを仰っているのかを把握し、最も大事な部分を入れるとともに分かりやすくまとめるために、言葉と言葉を切り取ってつなぎ直すことも必要です。
そうするためには文字起こしの手間も省略することはできませんし、文字起こしを見て編集使用する箇所をつなぎ直して構成するための編集構成表(字コンテ)も作成する必要があります。
出来上がった文字起こしと字コンテを使うことによって、ようやく編集ソフトのタイムラインへ映像・音声をスムーズに載せていくことができます。
そしてタイムラインに並んだらそれで終わりではなく、詳細は省略しますがその後の作業のほうが実はずっと多いです。
このように時間と労力が大変かかりますし、この膨大で緻密な作業を細かな操作のしにくいスマホで行うとなると、さらに手間がかかって気が遠くなります。
動画編集が可能なハイスペックのPC、高度な機能がついた業務用の編集ソフト、それに編集専用のキーボードもほしいところです。
従いまして、労力の点でも編集機材の点でも「誰でも作れる」「お手軽な」ものでもありません。
最後に「スマホで見る」という部分ですが、これはどうでしょう。
スマホで自分史ムービーや終活動画を見ることは、もちろん可能です。
ただ、制作して完成した自分史ムービーや終活動画はMP4データかブルーレイもしくはDVD形式でディスクに収載し、当舎の場合は個別にデザインした装丁パッケージに入れて納品します。
このままではスマホに配信されませんので、例えばYouTubeに限定公開するなど、お客様のほうで配信していただくことになります。
そして、「スマホで見る」ことについて最も申し上げたいのはここからです。
自分史ムービーや終活動画をご覧になるときは、可能であればTVの大きな画面で見ていただくか、そうでなければPCのモニターで見ていただいたほうが、スマホで見るよりもずっといいと当舎は考えています。
例えば映画をご覧になるとき、スマホで見るよりも映画館で見るほうが臨場感や見ごたえがあるということはご賛同いただけるかと思います。この場合、スマホは手元にある代替手段でしょう。それと同じです。
「猫の動画」などでしたら、スマホを使って、電車の中で見ても料理しながら見ても十分かと思いますが、自分史映像を制作している者の思いとしては、TVかPCの大きな画面で、それも落ち着いた場所で映画のようにじっくりとご覧いただいたほうが、より醍醐味を感じていただけると思います。
スマホで見てもストーリー自体は分かりますが、それだけでご満足されずに、ぜひ改めてTVかPCでも見てみてほしいと思っています。
このように、終活動画はよくある「動画」という言葉が持っている「ネットで配信され」「スマホで見る」「おもしろくて」「尺が短い」「誰でも作れる」「お手軽な」ものというイメージとは少し異なっていると言えます。
「動画」という言い方を避けて「映像」と呼ぶ方は映像業界に多いのですが、それはよくある「動画」のイメージになるのを避けたいからかも知れません。
私もどちらかというと「映像」のほうがしっくりくるのですが、いまは一種の業界用語のようなものですので、当舎も「動画」という呼び方を使っているのが実状です。
当舎は自分史ビデオと自分史ムービー・自分史動画、終活動画と終活ビデオ・終活ムービーを同じ意味で考えております。